独立して起業した場合における様々なリスクについて〜資金・健康・精神面から考察〜
ビジネスを行う方法として会社を辞め独立し起業する、という選択がありますが、現実問題として起業に失敗する確率は成功する確率に比べてはるかに高いと言われています。
起業して独立を考えているあなたにとって、具体的にそれらのリスクはどのようなものがあるのか気になるところでしょう。
今回は以下に並べた側面においての独立して起業する場合のリスクならびにリスクを回避するために大切なことについて説明していきます。
目次
収入が不安定
安定した会社に勤務していればリストラされずに済んだり、会社が倒産しない限り一定の収入を得ることが出来るのに対し、独立起業すれば不安定でワーキングプアになりうる可能性も高いでしょう。
交通費や備品などこれまで会社の経費で賄えていたものがすべて自腹に変わります。
とはいえ多くの人が独立初年度に収入が下がるもののその後は自分次第です。険しい道かもしれませんが、収入アップの可能性は十分にあります。
生涯賃金は自分の経営手腕次第
もちろん職種や業種によっても違いますが、独立して起業した場合、基本的に生涯賃金は予測不可能なところがあります。
生涯賃金はそのときどきの収入とその収入がいつまで続くのかに依存します。
安定した収入と雇用が期待できる大きな会社とは違って、独立して起業した場合、業種や職種にもよりますが基本的に収入に波があるでしょう。
事業が失敗すればもちろん撤退しなければなりませんし、いったんある程度成功したとしても社会情勢に影響され、急に経営状態が悪くなるというようなケースもあります。
のちほど詳しく説明しますが、個人事業主は国民健康保険に加入すること多いですが、健康問題が生じて働けなくなった期間ににサラリーマンなら会社から受け取れる傷病手当金の給付をもらうことが出いないため、本人の健康面にも左右されるといえます。
もちろんしっかりとした事業計画をたて本人の努力によって最終的に成功して大きな利益を安定して得るようになれば、独立せずに会社に勤めていた場合よりもずっと大きな額の生涯賃金を手に出来ますが、本人の力量以外にもさまざまな要因によって左右されるため、生涯賃金は不確実なものでしょう。
オーバーワークで体を壊す人も多い
独立すれば会社に勤める場合とは違い、いつ働いていつ休むのかすべて自分で決めることができます。実際にどれくらい働きどれくらい休むのかは経営者本人の性格によるところが大きいでしょう。ついついだらけてしまう人もいれば、休みの時も仕事のことが頭から離れずオーバーワークとなって苦しむ人もいます。オーバーワークとなってしまえば健康を損なってしまいかねません。個人事業主は勤め人とちがって健康診断の義務がありませんので健康状態の悪化に気が付きづらいでしょうし、国民健康保険には加入できるものの、健康を損なって働けなくなった場合、基本的には傷病手当金を受け取ることもできません。
そのため時間管理能力をしっかりと身に着けて規則正しい、健康を意識した生活を送ることがとても重要です。
雇用により固定費がかさんでしまう
独立して起業した場合、事業が軌道に乗ってから従業員を雇うことも多いでしょう。
一度従業員を雇用したら様々な責任が発生します。業績が悪くなったからといって簡単に解雇することはできません。労働基準法などの法律により、労働者として守られているからです。そして、家族も含めて従業員の生活にも責任を持つことになることもしっかりと心にとめておかなければなりません。
事業計画や景気動向も考慮し、慎重な採用計画を立てることが大切です。
役職、給与体系、休日、勤務時間などの待遇条件を決める必要があります。基本給の他にどういう手当をどんな基準で支給するのか、賞与、退職金などを支給するのかなど長期的視野で賃金体系を検討します。
最初から基本給を高めに設定してしまうと、給与が固定費化し、重い人件費負担が重くのしかかって失敗してしまうというリスクもあります。
最初から基本給を高めに設定するのではなく、能力、勤務態度、業績などにより、賞与やインセンティブ給で報われるという給与体系にするとよいでしょう。
給与の他にも
- 社会保険料(健康保険料、厚生年金保険料)
- 雇用保険料
- 労災保険料
- 定期代などの通勤交通費
- 備品(机、イス、パソコンなど)
- 福利厚生費
など、給料以外にも少なくとも2割から5割のコストがかかることを認識しておきましょう。これらを考慮せずに賃金を決め、後になってから大きな負担に気づくというリスクもよくあります。
独立当初は社会的信用がない
独立して起業した時に、資金不足の問題にぶつかったときに役立つのがクレジットカードやカードローンでしょう。
しかしクレジットカードやカードローンの審査の時、独立した方の審査は会社員に比べて厳しくなっていて、独立してからクレジットカードなどの審査に通らなかったというリスクがあります。これらは安定・信用があるかないかで判断されるからです。
(クレジットカード会社は貸したお金を返してくれるか、毎月きちんと返済できるかどうかを見ています。)
会社員の方は安定しており、毎月安定した収入がありますが、独立した方は毎月安定した収入があるかどうかが分からないため信用度が低くなってしまいます。
会社勤めをしている時の方が信用もあり、安定があるので審査にも通りやすいので、会社に勤務している間にクレジットカードを作っておくとよいでしょう。
もちろん独立してからの努力によってクレジットカードを作ることもできます。最終的にはさまざまな経営審査基準クレジット会社の信用を勝ち取り、クレジットカードを作ることを目指すのが理想といえるでしょう。
ちなみにクレジットカードの大きな審査基準は
- 財務状況
- 営業年数
- 固定電話の有無
- 会社の公式ホームページで業務紹介
などです。
社会保険が自己負担になる
社会保険にはおもに医療保険・労働保険・年金保険があります。
以下でそれぞれの項目に分けて独立して起業した場合のリスクについて説明します。
医療保険
これは他の社会保険にも共通する事ですが、健康保険料は会社に勤めていれば、会社と折半なのに対し、独立して起業し、個人事業主となれば全額自己負担になります。
また、雇用した従業員の健康保険料も負担しなくてはなりません。事業主は従業員の社会保険料である健康保険の半分負担しなければならないので、加入する前に負担額を計算した方が良いでしょう。
労働保険(雇用保険と労災保険)
労働保管には雇用保険と労災保険があります。
雇用保険
個人事業主本人は雇用保険に入ることは出来ません。
しかし事業主は、原則として雇用保険加入要件を満たす労働者を1人でも雇用する場合、
その従業員の雇用保険の加入が義務付けられています。
上記でいう労働者とは、フルタイムで働く正社員だけではなく以下のような条件を満たす雇用者のことも指します。
- 労働時間週20時間以上
- 契約期間31日以上
これらに加入するためには、労働保険の加入手続きを労働基準監督署(労基署)で行なった後、雇用保険に関してはハローワークでも手続きを行う必要があります。
独立した場合、このような手続きが増えて負担となるでしょう。
事業主は従業員の社会保険料を半分負担しなければならないので、従業員を雇用する前に雇用保険の負担額を計算しておくと良いでしょう。
労災保険
事業主は雇用者を一人でも雇用した場合、労働保険に加入する必要があります。
労災保険に加入するためには、労働保険の加入手続きを労働基準監督署(労基署)で行なった後、労災保険の加入手続きも労働基準監督署の管轄所で行う必要があります。
事業主は従業員の社会保険料である労災保険の半分を負担しなければなりません。そのため雇用をする前に負担額を計算しておくのが良いでしょう。
ちなみに個人事業主であれば、自身は労災保険に加入することは出来ません。
年金
年金には主に国民年金、厚生年金の2種類があります。
会社に勤務していれば厚生年金への加入が義務付けられていますが、個人事業主の場合はそうとは限りません。
しかし個人事業主は常に5人以上の従業員を雇用している場合、強制的に適用されることとなります。よって個人事業主だったとしても加入手続きをしなければなりません。
※ただし次の業種については5人以上でも任意適用事業所といって、厚生年金に加入はできるけれども強制ではない事業所となります。
<任意適用事務所の一覧>
- 農林水産業
- サービス業
- 士業
- 宗教業
任意適用事業所は、従業員の半数以上が同意した場合において厚生年金に加入することが可能です。
税金の手続きを自分でやらなければならない
会社に勤めている場合は給料から税金を引かれるのに対し、個人事業主は所得から経費が引き、そこに税金がかけられるため、節税することができます。これは個人事業主のメリットである反面、この手続きである確定申告(手続き面倒)をすべて自分でおこなわなくてはいけないため、リスクとは言わないまでも労働面での負担となるでしょう。
精神的なプレッシャーが増す
労働時間、時間事業の方向性などすべての面において束縛されることなく自由に事業を進めることができる反面、先行きが不透明なことが多くプレッシャーが大きいでしょう。
また、従業員を雇った場合には、彼らの責任も負わなくてはならないことも精神的な負担になり得ます。仕事での人間関係に悩むのは事業主にかぎったことではありませんが、事業主の立場としての人間関係の悩みは、会社に雇われて働いていた時とはまた別の種類のものです。よって初めて起業した人にとっては今までに経験したことのない苦労となることでしょう。
このように個人事業主は様々な精神的負担を抱えることとなるでしょう。精神面でしんどくなると、事業がうまくいかなくなってしまうでしょうし、うつ病を発症するという最悪の事態にもなりかねません。国の調べによると、自殺者の数は年間3万人に及び、そのうち中小企業経営者がかなりの割合を占めるとも言われています。
最悪の事態にならないためにも、自分に合ったストレスを解消法を見つけ、常にメンタルを安定させるように心がけることが大切です。
自分の叶えたい社会像を創れる
自己実現とは、
「自分に最も適した達成すべき活動をみつけ、自分の可能性を発揮すること」
これは自己実現について定義された、心理学者マズローの言葉です。
マズローの名は五段階欲求で有名です。欲求の最上位にあるのが自己実現です。
仕事において、企業に勤務している時は会社の方針に左右されますが、
独立して起業した場合、すべてが自分次第であるので自己実現しやすいように感じるかもしれません。
しかし、実際に経営を存続させたり、他社が関わって目的を達成させたりする際には様々な障壁があり、簡単には達成できません。
とはいえ、裁量を持って仕事をすることは、自己実現のために情熱を燃やす大きな要因となります。
まとめ
このように独立して起業した場合、個人事業主か、法人かによっても異なる部分はありますが、メリットもたくさんある反面デメリットや、リスクを伴う側面も大きいです。
独立して起業しようと考えているならば、上記に並べた健康面・精神面・金銭面など多方面でのリスクを考慮して、起業する前に入念な計画をたてて、シュミレーションしておくことが大切です。
ブロックチェーン技術を用いたスタートアップで全く新しいプロダクトの開発や実証実験に携わりながら、ブロックチェーンの聖地であるスイスのチューリッヒ大学でその応用について研究し、日本国内においては企業に対する戦略面を考案するコンサルティングも行っている。https://naokiide.com/