スタートアップ「3つの失敗の法則」を日本の実例から学ぶ~実例の紹介付き~

もしあなたがスタートアップに成功したいと考えているのであれば、成功事例と失敗事例、どちらを勉強するでしょうか?

「スタートアップの成功事例が知りたい」という声をよく聞きます。
しかし、成功事例には特定の条件が揃っているために、自分と同じ条件に当てはまる事はあまりありません。

スタートアップの成功事例を学んで真似るということももちろん大事ですが、実際の失敗事例を学ぶことで今後注意しなければいけないこと、やらなければいけないことが見えてきます。

今回は、スタートアップ失敗の法則を「人間」「商品」「資金」の3つの側面から日本での実例を交えてお伝えしたいと思います。

日本でのスタートアップ失敗例

日本におけるスタートアップの失敗例については、経済産業省の「ベンチャー企業の経営危機データベース」というサイトがありました。

現在サイトは残念ながらクローズになってしまっておりますが、83社の失敗例の詳細を閲覧することができ、大変参考になるサイトでした。

こちらのサイトで、日本におけるスタートアップ失敗例の中から主な原因を調べてみました。

  • 1位:経営陣の人間関係(経営管理能力)(38%)
  • 2位:商品・マーケティング戦略ミス(32%)
  • 3位:資金繰りの悪化(30%)

スタートアップの失敗例は資金不足が主な原因と思われていることが多いですが、実は経営者の人間関係と管理能力の欠如がランキングのトップにいることがわかります。

経営管理能力とは、創業者同士の連携はもちろん、株式の運用、チームメンバーとのコミュニケーションなど多岐に渡ります。

日本におけるスタートアップ失敗例上位3位に入った「人間・商品・資金」の内容を、実際にあった失敗例を元に解説していきます。

人間関係での失敗例:ファッションサイト「Z社」

ファッションサイトのZ社は、新規顧客を獲得する目的会員向けの有料サービスを始めました。月額料金を支払って有料で会員登録すると、サイト内の商品が割引になるという内容です。

しかし、サイトに掲載しているメーカーがこの手法に反対します。大量の資金を投入してスタートしたサービスにもかかわらず失敗に終わってしまいます。

なぜ失敗したか

このZ社は社内の決定権もワンマン状態であったため、社内で反対できる体勢が整っていなかったこともありますが、それにしてもこれだけ大掛かりなスタートアップについて議論されていなかったのには驚きです(議論されていたのかもしれませんが、これだけ取引先から猛反発に合ってしまったので大問題です)

スピード感を重視して事業を進めてしまったことが最大の失敗要因でした。

失敗から得た教訓

経営陣のコミュニケーション、意見のすり合わせ、リスクヘッジを予想した上で、スタートアップをリリースする前に取引先各所との連携も取っておくべきだったと考えます。

商品・マーケットでの失敗例:電気自動車「R社」

R社は2016年に2人乗りの超小型電気自動車を開発しました。しかし当時の法律では、超小型の電気自動車のための車両規格がありませんでした。

一般的な乗用車と同じナンバープレートをつけることができないため、開発した電気自動車を走行させるためには、各自治体ごとにそれぞれ走行許可の申請を出す必要があったのです。

全国区での走行許可が下りなかったために電気自動車を量産化することができなかったため、生産コストを下げることもできませんでした。

超小型電気自動車の法整備については国土交通省内進められて2018年に結論が出ていますが、現状いまだに法制化されていません。

結果、超小型電気自動車のスタートアップ事業は廃止となってしまいました。

なぜ失敗したか

高齢者の自動車事故が増加する中、自動運転の技術に大きな期待が寄せられています。
地方の公共交通機関の過疎化をカバーする「Maas(モビリティ・アズ・ア・サービス)」が近年ようやく動き始めています。

しかし、2016年当時はまだ法制化の議論さえ行われておらず、開発前にアイデアを行政に共有して議論の場を設けておけばこのような失敗は起こらなかったかもしれません。

失敗から得た教訓

法制度という最大の壁をクリアしながら電気自動車の開発を進めていたものの、行政との連携不足、そしてリサーチ不足がネックになってしまいました。

スタートアップは完成させる前に動くことが重要と言われたりもしますが、やはりマーケットリサーチには十分な時間をかけておくことが重要です。

商品はできたが受け入れてもらえないとなれば、当然資金面でも苦難に立たされることになります。

資金面での失敗例

インテリアメーカー「O社」の例

2017年、インテリアメーカーO社は、既存の家具の概念を変えるファッショナブルなデザインの商品を開発します。

かつて北欧の家具を独特の方式で販売したIKEAのイメージになぞらえて、今の時代に合わせたデザイン性のある家具を打ち出しました。

スタートはクラウドファンディングを活用して資金集めに成功します。
順調に思われたスタートアップでしたが、その後の運転資金が回らずに、この商品は企画倒れとなってしまいました。

なぜ失敗したか

この家具はコンセプトが明確であったために多くの賛同者を集めました。
ところがデザイン料や材料原価が当初の予想以上にかさんでしまい、2回転目以降の利益を生み出すのが難しくなってしまったのです。

失敗から得た教訓

クラウドファンディングはスタートアップの大きな味方ですが、継続性では弱い部分がある点には注意が必要です。
初回の商品発表インパクトだけでなく、ランニングコストをしっかりと計算した上で事業を進めていくことが重要です。

今後のスタートアップで同じ失敗を繰り返さないために

失敗する経営陣には以下のような経営能力の失敗例の共通点があります。

  • 戦略:アイデアのブラッシャップやリサーチに十分に時間をかけず売れない商品を作ってしまうケース。基本中の基本ですが、この部分を疎かにしている経営者は数多くおります。
  • 実行:スケジュール調整の甘さはチームだけでなく、投資家や取引先にも迷惑をかけます。戦略の部分では時間をかけなければいけないのですが、実行のスピードも合わせて重要です。
  • チーム作り:経営陣と従業員が一つのチームとして団結せずコミュニケーションが取れていないケースが多々あります。チームメンバーを増やす際は、コミュニケーション力に優れた人材は必須と言えます。

経営能力について

経営能力については経営陣・メンバーが一体化して進むのが基本です。スタートアップ時は組織をまとめるのが難しいと言われています。

チームは一人では不可能な大きなスタートアップを動かすことができます。

しかし、スタートアップと組織は相反するものです。特に創業当初はルールも明確でなく、試行錯誤が必要となります。
それらを経てようやく組織・チームとしてのルールが出来上がっていきます。

もともとルールが存在しないため組織論は通用しません。そのことを全員がしっかりと理解している必要があります。

商品について

商品やサービスは「今」世の中に必要とされているかを検証しましょう。マーケットフィットしているかどうかの判断は、カスタマーの悩みを解決できる稼働かがカギになります。

カスタマーの数、カスタマーの悩みの種類、それらに商品やサービスがマッチしているかどうかが重要になります。

日本での失敗例で多いのは、まずはアイデアを形にしてしまおうという考え方です。

スタートアップには競合も多いため、まず自分たちが考えたことを進めてしまいたいという気持ちは非常によくわかります。

しかし、もし費用をかけて開発した商品やサービスがマーケットフィットしていなかったら…その後破綻の道へ向かってしまうのは明白です。

商品やサービスを形にする前に、しっかりと時間をかけてマーケット調査をすることが重要です。

資金面について

投資家と株主の分配割合には注意しましょう。スタートアップが法人である場合、創業者間での株式分配も大きな課題です。

創業者同士での意見の相違が生じた場合に決定権が平等になってしまっていると、事業が先へ進めなくなってしまうケースがあります。

代表者を一人決めて集中して保有するのが得策です。

支配権の集中になるリスクを心配する人もいるかもしれませんが、新しく投資を受けるようになれば株式は投資家たちに分散されるので問題はありません。

まとめ

スタートアップが失敗するのは、マーケットのリサーチ不足、商品の製品化スキル、法律による規制強化、ビジネスモデルの欠陥、競合との価格競争、チーム内での意見の違いによる仲間割れ、運転資金の枯渇などの要因があります。

大きく分類すると「商品・人・資金」になるのですが、日本でのスタートアップはアメリカでのビジネスを参考にしているケースがほとんどで、日本国内での商品需要、チームの文化、投資家との関係性などをあまりリサーチせずに進めてしまう傾向があります。

もし今あなたがスタートアップを検討しているのであれば以下の3点をまずチェックしましょう。

  • 商品やサービスは「今または近い将来」必要とされているか。マーケットの規模はどのくらいか
  • スタートアップの協働メンバーとのすり合わせはできているか。口約束で進めていないか。
  • 開発した商品を何回転もリリースできるようにランニングコストを計算しているか。

スタートアップに興味がある場合、焦らないことも大事です。
もちろんスピード感は大事なことですが、スタートアップの際はスピード感と同時に情報収集力、冷静な判断力も合わせ持つことが成功と失敗を分けると言えるでしょう。